2/24 赤い蠟燭〜新美南吉と音楽/寺嶋陸也新作歌曲


新美南吉(にいみ・なんきち)は「ごんぎつね」や「手袋を買いに」などの児童文学で知られる作家です。愛知県の知多半島の、静かな日常風景の中で語られる小さな幸福や反省や憤りは、わたし自身の幼年期の生活に重なります。

 

わたしは、南吉と同じ愛知県の、三河湾を挟んだ反対側に位置する渥美半島で生まれました。言語圏が一部重なることもあり、南吉の言葉は素直に身体に入ってきます。

 

わ たしのぼんやりした記憶にある子ども時代の生活環境には、南吉のお話で語られる世界がまだ残っていました。もちろん、ガスも水道も電気も通っていたけど、 知らない老人たちがよその子どもを呼び止めて思い出話を聞かせる日常があったし、夕方になると辺りはひっそりと闇になった。寒すぎず暑すぎない穏やかな 日々が繰り返され、なにかしら小さな事件が起こったりした。「おじいさんのランプ」も「牛をつないだ椿の木」も、まったく身近で見聞きした話に思えるほど です。

 

南吉は29年 という短い病身の人生で、自らを奮い立たせて、ものすごいエネルギーで作品を書きました。かわいい童話、せつない物語だけでなく、恋を連想させる詩もあり ますし、驚くほど厳しいお話もある。そんな新美南吉の世界を歌で表現できたらと思い、寺嶋陸也さんに新作を書いていただくことになりました。独特の色合い を持つ方言や澄んだ言葉が盛り込まれた新美南吉のお話が、どのような音楽になるのでしょう。楽しみです。

山内房子(やまうち・ふさこ)